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アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第二話 あらすじと感想

相変わらず光の表現が良い。エメラルドのブローチやウィスキー(?)のグラスに反射する光。そして、雨が上がって雲間から光が差すシーン。この物語のライデンは架空の街だが、現実のLeidenあるいはオランダと言えば、フェルメールレンブラントの二人の画家を生み出した土地だ。彼らは光(あるいは闇)の表現に長けた画家だった。その辺も関係するのか。

それから布地や壁紙のテクスチャーがすごく細かい。たぶんCGで貼り込んでいるのだろうが、最近のゲームのようなフォトリアルな質感だ。しかも、手描きの背景やキャラともうまく馴染んでいる。海や川、雨などの水の表現もリアルかつ自然だ。

キャラデザインについては、登場人物の瞳の色に個性が表現されているようだ。従来のアニメのキャラと言えば髪の色で個性がつけられていて、普通の日本人のはずなのに青色やらピンク色やら、なかなか派手な髪色をしていたものだが、この作品のキャラの髪色は普通で、その代わりに瞳の色がカラフルになっている。ヴァイオレットは水色、少佐は緑色、カトレアは紫色、アイリスは黄色で、エリカは茶色。それから、服装やアクセサリーにもテーマ・カラーがあるようだ。カトレアは赤、アイリスはターコイズっぽい水色、エリカは黄緑色(アースカラー?)という感じ。色彩にはこだわりが見える。ちなみに、エリカ様は他のキャラより目が小さく、そばかすがあり、唇に黒子が描かれている。化粧をしていない(もしくは薄い)ことの漫画・アニメ的な表現なのだろう。

世界設定も凝っていて、あえて普通のファンタジー物とは異なる違和感を出そうとしているように感じる。たとえば、ベネディクト(配送係の男の子)が昼食に「焼きそば」を買ってくるくだり。絵から判断すると塩焼きそばと肉団子のようだ。しかも、ハリウッド映画にでてくるような白いテイクアウト用の箱に入っていて、箸を使って食べている(見返してみると、1話でも普通に箸を使っていた)。これはベネディクトが受付の美人を誘うために買ったものなので、ちょっと値段が高いのかもしれない。普段は昼食にバゲットサンドを食べるのが一般的なようだ。エリカ様は弁当を作っているようだが、中身は映らなかった。アメリカでは19世紀頃から中国系移民が中華料理レストランを開いているので、この作品の時代(20世紀初頭あたりか)に中華料理があってもおかしくないが、ヨーロッパ、特にオランダで、この頃から中華のテイクアウトは一般的だったのかどうか。

それから、この世界ではお茶をガラス製のカップで飲むのが一般的のようだ。昼食のシーンで同じデザインのカップが複数でてくるので、きっとあれは会社の備品なのだろう。1話のエヴァーガーデン家でもお茶はガラス製カップに入っていた。調べてみると、ガラス製食器で有名なPYREXは1915年に登場し、当初は実験器具などに使われていたが、1936年頃から食器製品が発売されているという。

imilk-antiques.comというわけで、現実の第二次大戦前のヨーロッパに、あんなに中華料理やガラス製カップが普及していたとは思えないので違和感を覚えるが、技術的には可能でギリギリでオーパーツではない、という線をうまく選んでいるようだ。

それから、タイプライターの鍵盤が映るシーンでこの世界のアルファベットが確認できる。現実のアルファベットとは異なっており、平仮名や漢字のような形の文字も見える。時計の盤面を見るに数字も違うようだ(0、1、2だけは現実のそれらに近い)。その割に「FとJの鍵に指を置け」と言っているので、アルファベットの読みやタイプライターの鍵盤配置は変わらないらしい。

通貨については「クロル」という単位が出てくる。借金返済の猶予を求める文脈で「毎月2クロルずつ払う」と言っているので、平均的な返済額よりは少ないということで2000円ぐらいとすれば、1クロルはおよそ1000円。その後で、「毎月2クロルだと120年間払い続けることになる」とのことなので、借金の総返済額は240クロル(金利は無視)。1クロル1000円なら24万円程度。割と良い線だと思う。おそらく、昼食一食分が1クロルでお釣りが来る程度なのだろう。

さて、第二話のストーリーを振り返ろう。エピソード・タイトルは「戻って来ない

ヴァイオレットが「人形」としての訓練を開始。義手の調整(?)を行うシーンは『ターミネーター2』のオマージュか。調整後にタイプを始めると、皆があっけにとられている。ヴァイオレットのタイプの才能が開花したのかと思ったら、打鍵音がうるさかったようだ。今でも「カチャカチャ、ターン」は嫌われるね。ヴァイオレットは今後、自動手記人形の学校に通うようだ。

「人形」にはタイピングだけでなく文章創作力も要求される。要領を得ない依頼主の真意を汲み取って適切な表現に落とし込まなければならない。この部分では、ヴァイオレットには絶望的に才能が欠けている。しかも、それを自覚していない。女性が依頼した恋文を軍の報告書の文体で書き上げ、それを抑揚なく読み上げる様は、まさに残念な言語力のミカサ・アッカーマンそのものだった。

周りの反応を見て、ようやく自分に欠けている能力があることに気づくヴァイオレット。ベネディクトは「人形」を辞めて配送担当に戻れとアドバイスする(少し下心がある?)。アイリスは「人形」部署からヴァイオレットを外すようホッジンズに談判する(こちらはツンデレの気配)。だが、どうしても「人形」を続けたいと固い意志を見せるヴァイオレット。その姿をみて初期衝動を思い出すエリカ様。これからエリカ様が主役の話が始まる予感。

ヴァイオレットは「人形」として正式に配属され、制服(?)が支給される。そして、ホッジンズがエメラルドのブローチを渡す。闇市に流れていたのを発見して買い戻したらしい。その夜、バーで酒を酌み交わすホッジンズとカトレア。ホッジンズはブローチを買い戻したせいで金欠で、今晩の酒はカトレアの奢りだ。カトレアから「少佐」とは何者かと聞かれたホッジンズは「あいつはもう戻ってこない」と答える。

戻ってきたブローチと、戻ってこない少佐。頑なに「死んだ」と言わないところを見るに、たぶん死んでいないのだろう。だが、そう思わせて実は、の線もあるか。いずれにせよ、これだけ勿体ぶっているのだから、何か意外な展開が待っていると期待しよう。

他にも回想などで分かった情報をまとめる。ヴァイオレットはギルベルトが兄ディートフリードから四年前に譲り受けたもの。ディートフリードは「北東戦線で拾った」という。ホッジンズとカトレアは恋仲。ホッジンズはブローチの買い戻しで金欠なことを「今月は俺の給料なし」と表現するが、これを聞いたベネディクトは会社の経営が危ないと誤解する。後で余計なことをやらかす予感。ヴァイオレットは1話でホッジンズからもらった仔犬のぬいぐるみを、とくに大事にしている様子ではないものの手元に置き続けている。今後の伏線? ちなみに、ヴァイオレットが選ばなかった兎と猫はホッジンズがオフィスの机に飾っている(可愛い)。ブーゲンビリア家は「辺境伯」と呼ばれている。「自動手記人形」とは、タイプライターの原型になったオーランド博士の発明品のこと。視力を失った小説家の妻のために作ったらしい。

次回からはエリカ様の話が始まりそうだ。