ふるたち

ふるたちです。

夫婦別姓と「野比しずか」

はてなブックマークを見ていたら面白いことが起きていた。

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togetter.com

上に載せた一つ目のツイッターでは、吉峯耕平弁護士が選択的夫婦別姓制度への懸念を表明している。かつて女性の社会進出が広がったことで専業主婦が否定された(専業主婦を好意的に扱うことが禁忌化した)ことを引き合いに、夫婦別姓が広がれば夫婦同性が否定される(夫婦同性を好意的に扱うことが禁忌化される)のではないだろうかというわけだ。これに対して「実際に起きていないリスク」であるとした批判的なブックマークコメントが散見される。

一方で、ふたつ目のまとめでは、ドラえもんの新しい映画『STAND BY ME  ドラえもん2』の宣伝広告で主人公の野比のび太と結婚したヒロインの源しずかが「野比しずか」を名乗っていることに対して「古い価値観だ」「キツい」といったコメントが寄せられている。

吉峯弁護士のツイート時刻が11月20日の午前10時頃で、「野比しずか」のまとめで一番最初に出てくる批判的なツイートは翌21日の午後5時半だったので、二日とかからず吉峯弁護士の懸念が現実化したことになる。吉峯弁護士の懸念を「実際に起きていないリスク」と評した人たちは滑稽な道化を演じてしまい、理想を高く持ちすぎると現実が見えなくなるという好例になってしまったようだ。

一般に安易な未来予測はしない方がいいし、自分の信念に都合のいい予測ほど気をつけるべきだろう。今回はフィクション上の話だが、現実に選択的夫婦別姓制度が導入されたときに新婚夫婦たちがどういう選択をするかはわからないし、その選択に対して社会がどのように反応するかもわからない。夫婦同姓を選んだカップルに対して「前時代的だ」「ダサい」といった批判が寄せられるかもしれない(むしろ、今回の件をみるに、その可能性は結構高そうだ)。あるいは、選択的夫婦別姓制度が導入されたにも関わらず、ほとんどのカップルが従来通り夫婦同姓を選んでしまう、という未来もあるかもしれない(夫婦別姓を選ぶことが「意識の高い人」というレッテルを貼られて忌避される、とか)。

日本社会は同調圧力が強いので、その圧力がどう働くかによって社会のありようは大きく変わる。だいたい、現行の夫婦同姓制度がまるで男女差別的かのように語られることがあるが、実際には現行法は男女平等だ。夫と妻のどちらかの姓に統一しろと言っているだけだから。そうなのだが、現実には大多数のカップルが夫の姓を選んでしまっていて、それが問題なわけだ。つまり、選択の自由があっても行使されないことが問題なのであって、選択的夫婦別姓制度でも同じことが起きる可能性は排除できない。これは同調圧力の問題で、使い古された言葉を使えば「空気」の問題だ。そして、これは日本社会の宿痾なだけに解決は難しい。

ところで、私は「野比しずか」に対して「古い価値観だ」とか「キツい」などの反応を示した人が間違っているとは思わない。古い価値観なのは間違い無いし(ただ、もちろん、古いから悪いわけでもない)、夫婦別姓が進歩だと信じるならば受け入れがたいのも仕方がないと思う。私は夫婦別姓が必ずしも進歩だとは信じていないので拒否反応を示すほどではないが、「未来」の描き方としては陳腐だな、と思った。

原作のスタート時点から考えれば、現在は野比のび太源しずかが結婚していたであろう年をとっくに超えているはずだ。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なら2015年にはすでに車が空をビュンビュン飛んでいるはずなのに、というような、「未来」を描く古典SFで起こりがちな錯誤が発生するのだが、漫画やアニメの中の二人はいつまでも小学生のままなので、私たちは彼らを小学生と認識している。だから、その二人の結婚を描くストーリーは未来の話なのだ。

フィクションで未来を描くとき、そこには作家の社会や人類に対する視線が反映される(はずだ)。バラ色の未来が描かれるなら、そこには現在の社会が抱える問題が顕になる(なぜなら、それを克服したからこそ良い未来なわけだ)し、ディストピア的な未来が描かれるなら、そこには人類には幸福な社会など作れないのだという皮肉がこめられている。

この映画の制作者は「野比しずか」にどちらの意味をこめているだろう。前者なのだとすると夫婦同姓制度を維持することが良いことだと言っているわけで、それに進歩的な人々が反発するのは無理もない。後者であれば、これはなかなか強烈な皮肉(つまり、どうせ日本では夫婦別姓など実現しないと言っているわけ)であって、そうだとすれば私もこの映画を観てみたいと思う(たとえば、野比家の人々に押し切られて改姓してしまった源しずかが、そのことで苦悩したり後悔したりする姿が描かれていれば、それは令和2年に公開される映画として最高の出来になると思う)が、多分その可能性は低い。

その他に考えられるのは「制作者が何も考えていない」というパターンで、未来に対する視座も現在に対する批評もなく、ただ「(旧来的な意味での)結婚は素晴らしいよね、感動するよね」という通俗的な価値観のままに作っている可能性もあって、私はこの可能性が結構高いと思っている。だから「陳腐」だと感じた。

もっと酷いパターンも考えることができて、それはこの映画に作家性など存在せず、「こういう通俗的な価値観を示せば売れるから」という商業主義のみで作られているという可能性である。そうだとすれば、私を含めて「野比しずか」に釣られた人々は馬鹿を見たことになるわけだ。この可能性も、それなりにあると思う。だが、名作を元にしたこの映画が、そこまで邪悪な作品ではないと信じたい。

アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第四話 感想

今回はアイリスの話。

アイリスは同郷の男に告白して玉砕した過去を持つ。「愛してる」を言った側の人物であり、「愛してる」を言われた側のヴァイオレットと対称を為す。

ヴァイオレットがアイリスの依頼で代筆した手紙は合格点だったらしい。自動手記人形として修練を積んでいるようだ。

今回の話でアイリスの人物像が明らかとなった。一言で言えばお上りさんで、田舎から一念発起して都会のライデンに出て来て人気職業の自動手記人形になれたことを誇りに思っている。しかし、実際にはまだ下っ端でカトレアのような人気者になれていないことにコンプレックスを抱えている。田舎の両親からは「職業婦人」など辞めて早く結婚して欲しいと思われており、そのことに反発している。

アイリスが(エリカに比べれば)垢抜けた服を着ているのも無理をしているのかもしれない。高いヒールの靴も意地で履いているのだろう。第二話でも足をグネっているし、今話ではヒールのまま田舎に来て泥にハマっている。ただ、アイリスは自分の服を「ドールの衣装」と言っていたので靴も含めて制服なのかもしれない。他の自動手記人形もいつも同じ服を着ているようなので制服なのだろう。とすると、カトレアのあの大胆な服も制服なのか。まさかホッジンズの趣味?

他に今話で明らかになったことは:

  • 近々、戦後初めての選挙が行われる。
  • この世界の立法府貴族院庶民院からなる二院制である。
  • カザリは南方にあり温暖で稲作を行っている。
  • ヴァイオレットの名は菫にちなんで少佐がつけたもの。

今話でもヴァイオレットがカーテシーをするシーンやアイリスが足の指を丸めるシーンなど足の描写が印象的だった。もはやフェティッシュと言っても良いレベルだと思う。

 

 

ふるたちの手抜き料理 (4) サバ・サンバル

鯖の切り身にサンバルをつけて焼いたもの。

材料:

  • サバの切り身
  • サンバル

必要な器具:

  • 魚焼きグリル(なければフライパンでも)

作り方:

  • サバの水気を拭き取る。
  • 予熱した魚焼きグリルにサバを入れる。片面焼きの場合は皮目を上に。
  • 皮側が焼けたらひっくり返し、サンバルを適量塗る。
  • サバに火が通ったら出来上がり(サンバルが焦げるので焼き過ぎに注意)。

サンバルはインドネシアの辛味調味料。発酵エビ(テラシ)が入っていて刺激臭がするが、火を通せば匂いは飛ぶ。カルディ・コーヒーファームで買った「KOKITA SAMBAL BAJAK MILD」を使用。

アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第三話 あらすじと感想

前回、エリカ様のストーリーが始まりそうなどと書いたが、予想が外れて新キャラのルクリア・モールバラ(ルクリアが花の名前)の話だった。

ルクリアはヴァイオレットが通う自動手記人形の訓練学校の同級生。ライデン育ちである。学校の生徒は様々な地域からの出身者が多いらしい。ライデンは都会で、この学校はブランドなので、ここを卒業して故郷に戻れば就職に有利ということらしい。そんな中でライデン育ちの生徒は珍しいようだ。

ヴァイオレットはタイピングの技能や座学では優秀な成績を修めるが、実際に手紙を書く実習(生徒同士でペアを組んで模擬代筆を行う)では人情を理解できず、先生から「これは手紙ではない」と酷評されてしまう。結果、ヴァイオレットは課程を終えても卒業できなかった。

その後、ルクリアと彼女の兄を軸にストーリーが展開するが詳細は割愛する。

今回の話はヴァイオレットと少佐をめぐる主軸のストーリーに進展はなかった。おそらく、今後はこういう風にヴァイオレットと関わる人々の視点から様々な物語が描かれ、少しずつヴァイオレットと少佐の物語が進展していくのだろう。

1978年の『ゾンビ (Dawn of the Dead)』以来フィクションの人気ジャンルに君臨するゾンビ物の面白さは、ゾンビという人間性を喪った存在を通して描かれる、生き残った人々の人間ドラマにある。同じように、本作では人情を知らないヴァイオレットに反射される周辺の人々の人情ドラマが描かれることになるのだろう。今回はアテが外れたが、いずれエリカ様やアイリス、カトレア、ベネディクト、そしてホッジンズのストーリーが展開されることになるはずだ。ルクリアも良いキャラだったので、今回だけのスポットで終わらず今後も再登場してほしいと思う。

作画の面では1話と2話で見られた特徴的な陰影の色彩(ホッジンズの髪の影の部分を明るいグレーにするような)がなくなっていた。1話と2話には特別に予算とスケジュールが配分されて気合の入った作画になっていたようだ。

それから、今話からOPとEPが入って通常のアニメの構成になった。OPの主題歌はTRUEで『Sincerely』、EPは茅原実里で『みちしるべ』。どちらも素晴らしい曲と歌唱だが、とくに『みちしるべ』が良い。ピアノの伴奏が最小限に抑えられていて無伴奏独唱のようになっており、茅原実里の子供のような声で表現される無垢さと、無伴奏独唱の持つ力強さがあわさって、なんとも切なく心に迫ってくる。茅原実里はエリカ様の声を演じているが歌詞の内容はヴァイオレットの心情のようでもある。今後、歌詞の意味がはっきりと理解できるようになるのだろうか。

 

アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第二話 あらすじと感想

相変わらず光の表現が良い。エメラルドのブローチやウィスキー(?)のグラスに反射する光。そして、雨が上がって雲間から光が差すシーン。この物語のライデンは架空の街だが、現実のLeidenあるいはオランダと言えば、フェルメールレンブラントの二人の画家を生み出した土地だ。彼らは光(あるいは闇)の表現に長けた画家だった。その辺も関係するのか。

それから布地や壁紙のテクスチャーがすごく細かい。たぶんCGで貼り込んでいるのだろうが、最近のゲームのようなフォトリアルな質感だ。しかも、手描きの背景やキャラともうまく馴染んでいる。海や川、雨などの水の表現もリアルかつ自然だ。

キャラデザインについては、登場人物の瞳の色に個性が表現されているようだ。従来のアニメのキャラと言えば髪の色で個性がつけられていて、普通の日本人のはずなのに青色やらピンク色やら、なかなか派手な髪色をしていたものだが、この作品のキャラの髪色は普通で、その代わりに瞳の色がカラフルになっている。ヴァイオレットは水色、少佐は緑色、カトレアは紫色、アイリスは黄色で、エリカは茶色。それから、服装やアクセサリーにもテーマ・カラーがあるようだ。カトレアは赤、アイリスはターコイズっぽい水色、エリカは黄緑色(アースカラー?)という感じ。色彩にはこだわりが見える。ちなみに、エリカ様は他のキャラより目が小さく、そばかすがあり、唇に黒子が描かれている。化粧をしていない(もしくは薄い)ことの漫画・アニメ的な表現なのだろう。

世界設定も凝っていて、あえて普通のファンタジー物とは異なる違和感を出そうとしているように感じる。たとえば、ベネディクト(配送係の男の子)が昼食に「焼きそば」を買ってくるくだり。絵から判断すると塩焼きそばと肉団子のようだ。しかも、ハリウッド映画にでてくるような白いテイクアウト用の箱に入っていて、箸を使って食べている(見返してみると、1話でも普通に箸を使っていた)。これはベネディクトが受付の美人を誘うために買ったものなので、ちょっと値段が高いのかもしれない。普段は昼食にバゲットサンドを食べるのが一般的なようだ。エリカ様は弁当を作っているようだが、中身は映らなかった。アメリカでは19世紀頃から中国系移民が中華料理レストランを開いているので、この作品の時代(20世紀初頭あたりか)に中華料理があってもおかしくないが、ヨーロッパ、特にオランダで、この頃から中華のテイクアウトは一般的だったのかどうか。

それから、この世界ではお茶をガラス製のカップで飲むのが一般的のようだ。昼食のシーンで同じデザインのカップが複数でてくるので、きっとあれは会社の備品なのだろう。1話のエヴァーガーデン家でもお茶はガラス製カップに入っていた。調べてみると、ガラス製食器で有名なPYREXは1915年に登場し、当初は実験器具などに使われていたが、1936年頃から食器製品が発売されているという。

imilk-antiques.comというわけで、現実の第二次大戦前のヨーロッパに、あんなに中華料理やガラス製カップが普及していたとは思えないので違和感を覚えるが、技術的には可能でギリギリでオーパーツではない、という線をうまく選んでいるようだ。

それから、タイプライターの鍵盤が映るシーンでこの世界のアルファベットが確認できる。現実のアルファベットとは異なっており、平仮名や漢字のような形の文字も見える。時計の盤面を見るに数字も違うようだ(0、1、2だけは現実のそれらに近い)。その割に「FとJの鍵に指を置け」と言っているので、アルファベットの読みやタイプライターの鍵盤配置は変わらないらしい。

通貨については「クロル」という単位が出てくる。借金返済の猶予を求める文脈で「毎月2クロルずつ払う」と言っているので、平均的な返済額よりは少ないということで2000円ぐらいとすれば、1クロルはおよそ1000円。その後で、「毎月2クロルだと120年間払い続けることになる」とのことなので、借金の総返済額は240クロル(金利は無視)。1クロル1000円なら24万円程度。割と良い線だと思う。おそらく、昼食一食分が1クロルでお釣りが来る程度なのだろう。

さて、第二話のストーリーを振り返ろう。エピソード・タイトルは「戻って来ない

ヴァイオレットが「人形」としての訓練を開始。義手の調整(?)を行うシーンは『ターミネーター2』のオマージュか。調整後にタイプを始めると、皆があっけにとられている。ヴァイオレットのタイプの才能が開花したのかと思ったら、打鍵音がうるさかったようだ。今でも「カチャカチャ、ターン」は嫌われるね。ヴァイオレットは今後、自動手記人形の学校に通うようだ。

「人形」にはタイピングだけでなく文章創作力も要求される。要領を得ない依頼主の真意を汲み取って適切な表現に落とし込まなければならない。この部分では、ヴァイオレットには絶望的に才能が欠けている。しかも、それを自覚していない。女性が依頼した恋文を軍の報告書の文体で書き上げ、それを抑揚なく読み上げる様は、まさに残念な言語力のミカサ・アッカーマンそのものだった。

周りの反応を見て、ようやく自分に欠けている能力があることに気づくヴァイオレット。ベネディクトは「人形」を辞めて配送担当に戻れとアドバイスする(少し下心がある?)。アイリスは「人形」部署からヴァイオレットを外すようホッジンズに談判する(こちらはツンデレの気配)。だが、どうしても「人形」を続けたいと固い意志を見せるヴァイオレット。その姿をみて初期衝動を思い出すエリカ様。これからエリカ様が主役の話が始まる予感。

ヴァイオレットは「人形」として正式に配属され、制服(?)が支給される。そして、ホッジンズがエメラルドのブローチを渡す。闇市に流れていたのを発見して買い戻したらしい。その夜、バーで酒を酌み交わすホッジンズとカトレア。ホッジンズはブローチを買い戻したせいで金欠で、今晩の酒はカトレアの奢りだ。カトレアから「少佐」とは何者かと聞かれたホッジンズは「あいつはもう戻ってこない」と答える。

戻ってきたブローチと、戻ってこない少佐。頑なに「死んだ」と言わないところを見るに、たぶん死んでいないのだろう。だが、そう思わせて実は、の線もあるか。いずれにせよ、これだけ勿体ぶっているのだから、何か意外な展開が待っていると期待しよう。

他にも回想などで分かった情報をまとめる。ヴァイオレットはギルベルトが兄ディートフリードから四年前に譲り受けたもの。ディートフリードは「北東戦線で拾った」という。ホッジンズとカトレアは恋仲。ホッジンズはブローチの買い戻しで金欠なことを「今月は俺の給料なし」と表現するが、これを聞いたベネディクトは会社の経営が危ないと誤解する。後で余計なことをやらかす予感。ヴァイオレットは1話でホッジンズからもらった仔犬のぬいぐるみを、とくに大事にしている様子ではないものの手元に置き続けている。今後の伏線? ちなみに、ヴァイオレットが選ばなかった兎と猫はホッジンズがオフィスの机に飾っている(可愛い)。ブーゲンビリア家は「辺境伯」と呼ばれている。「自動手記人形」とは、タイプライターの原型になったオーランド博士の発明品のこと。視力を失った小説家の妻のために作ったらしい。

次回からはエリカ様の話が始まりそうだ。

アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第一話 あらすじと感想

鬼滅の刃』とともに劇場版がヒットしている『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。名前は以前から聞いていたが、まだ見ていなかった。いまさらながらNetflixで視聴。

京アニ作品は、これまで『らき⭐︎すた』、『けいおん!』(途中まで)、『日常』、『響け! ユーフォニアム』を視聴済み。『氷菓』とか『たまこマーケット』とか、評判は聞いているが見ていない作品も多く、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』もその一つだった。

作画は安定の京アニ。とくに背景や光の演出が素晴らしい。背景はリアルなものに加えて、庭などの背景では水彩画風のものを効果的に使っている。キャラの陰影の部分の色使いが変わっていて面白い。ベースの色と色相を変えた明るめの色を使っていてイラスト風になっている。キャラの芝居では「手」「脚」を使った演出が目立つ。作品テーマでは「手」が重要なモチーフのようだが、登場人物のブーツや靴のクローズアップのシーンも印象的だった。

タイトルの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は主人公の少女の名前。もとの名は「ヴァイオレット」のみで、これは菫(スミレ)を意味する。しかし、主人公のデザインに菫色や紫色の意匠はないように見える。目の色も水色だし。何か別の意味があるのだろうか。「エヴァーガーデン」の方は、彼女を引き取った後見人の姓である。

さて、第一話。エピソード・タイトルは「「愛してる」と自動手記人形」。

舞台は、第一次世界大戦後の西ヨーロッパをモチーフにした架空世界のようだ。複葉機が飛び、鉄道や自動車が走っている。港には大型の蒸気船が停泊している。第一話の舞台となる街は「ライデン」で、オランダのLeidenのことかと思ったが、架空のライデンのようだ。この世界にも「大戦」があり、主人公側の国はこれに勝利したとのこと。

主人公のヴァイオレットは大戦で使用された「武器」である。この「武器」が何を意味するのかはよくわからない。人造人間? アンドロイド? 宇宙戦闘民族? あるいは、アッカーマン家とアズマビト家の末裔? とにかく、ヴァイオレットは戦闘力や作戦遂行能力に長け、上官からの命令に忠実であり、一方で感情や一般常識に欠ける部分があるというロボットのような人物造形になっている。彼女を戦場で「使用」したのはギルベルト・ブーゲンビリア少佐。ブーゲンビリアもまた花の名前だ。

余談だが、ブーゲンビリアと聞くと、僕は「たま」の『さよなら人類』という曲を思い出す。あの歌詞は「バラバラになったあの子のカケラをブーゲンビリアの木の下で探す」というもので、そのせいかブーゲンビリアになんだか不吉な印象を抱いてしまう。ちなみに、ヴァイオレットで思い浮かべるのは桑名正博の『セクシャルバイオレットNo.1』だが、こちらは歌詞にあまり意味がないので、とくに強い印象を受けることはない。

話を元に戻そう。ヴァイオレットとギルベルト少佐は大戦中の戦闘で負傷。ヴァイオレットは両腕を喪って僻地の病院へ送られ、そこで「アダマン銀」製の義手を装着する。退院後、ギルベルト少佐の親類のエヴァーガーデン家に引き取られ、退役したホッジンズ元中佐が始めた郵便会社で働き始めるところから物語が始まる。

郵便会社では無筆の人のために代筆業も行っており、そのサービスは「自動手記人形」と呼ばれている。代筆するのは普通の人間の社員なのだが、なぜ「人形」と呼ばれるのかはよくわからない。ヴァイオレットはそこで、「人形」の先輩となるカトレア(また花の名だ)が手紙を代筆する様子を見学する。手紙は依頼主の故郷の幼馴染みに宛てたもので、その幼馴染みは近々他の人との縁談がまとまりそうなのだという。依頼主の話を聞いたカトレアは、手紙の最後に「君のことを愛してる」と書いて良いかと提案する。ヴァイオレットは「愛してる」の意味が知りたいと言い、「人形」の業務を志願する。「愛してる」はヴァイオレットが負傷した少佐から聞いた最後の言葉だった。

戦争の話かと思ったら、戦後に「自動手記人形」として働く少女の話だった。「武器」とは何か。「人形」とは何か。ギルベルト少佐の消息は。ヴァイレットは少佐について何度も尋ねるが、ホッジンズははぐらかし続ける。おそらく既に死亡しているからだろうが、それだけなのか。冒頭でヴァイオレットは「少佐の瞳と同じ色」をしたエメラルドのブローチを購入したが、病院に送られてきた荷物にはブローチが入っていなかった。そのシーンで鞄の中に缶に入ったドングリ(?)が映っていたが、あれは何か意味があるのか。

戦闘ロボットが感情や愛に目覚めるというのは使い古されたネタ(『ターミネーター2』とか)ではあるが、今後どのように展開するのか。ヴァイオレットと少佐の関係は恋愛関係のようだが、同時に「武器」と「使用者」でもあり倒錯的だ。しかも、ヴァイオレットは「人形」になりたいという。ますます倒錯的ではないか(ゲーム『ブラッドボーン』に出てくるゲールマンの囁き声が聞こえる)。

 

ふるたちの手抜き料理(3)「キャベツと茸のアンチョビ炒め」

キャベツと茸をニンニクとアンチョビで炒めたもの。サイゼリヤの「キャベツとアンチョビのソテー」にきのこを加えたもの。塩分高め。

 

材料:

  • キャベツ フライパンに入るだけ
  • 茸(えのき、しめじ、ひらたけ、エリンギなど、なんでも) フライパンに入るだけ
  • にんにく 一欠
  • アンチョビ 好きなだけ
  • オリーブオイル (炒め油用、なければサラダ油でもごま油でも)
  • レモスコ (オプション、なければレモン汁とタバスコ、入れなくても良い)
  • 香辛料 (オプション、好きなものを好きなだけ)

 

作り方:

  • ニンニクを刻む。大きさは好きなように。細かく刻めば香りが出るし、荒く刻めば食感が楽しめる。ニンニクを焦がさないように。これ以降しばらくは、火はずっと弱火〜中火で良い。
  • フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ、香りを出す。オリーブオイルは、最低限ニンニクが十分に浸るくらい。(スパゲティのアーリオ・オーリオと同じ要領)
  • アンチョビを入れる。フィレの場合は、木べらやスプーンなどで崩しておく。
  • キャベツとキノコを入れ、蓋をして蒸し焼きにする。
  • キャベツから水分が出たら(ガラス蓋なら曇り具合で分かる)、全体をかき混ぜて油を行き渡らせておく。再び蓋をして蒸し焼きに。
  • 全体がしんなりしたら、レモスコと香辛料(胡椒とか)で好きな味に仕上げる。レモスコがなければレモン汁とタバスコや、七味唐辛子、柚子胡椒でも良い。鷹の爪でも良いが、その場合はニンニクと一緒に最初に入れて油に香りを移しておいた方が良い。
  • 最後に強火にして水分を飛ばす(ジューという音の違いで分かる)。

フライパンの大きさにもよるが、キャベツ1/4玉くらいがペロリと食べられる。レモスコは「広島レモン、海人の藻塩、ハバネロ」から作られた酸っぱいタバスコで、最近のお気に入り。パスタを入れても良い。茸が美味しい時期に、色んな種類の茸を入れると楽しい一皿。